おはようございます、一龍(@ichiryuu)です。
ビジネスパーソンが身につけておくべき教養のスタンダードなものとして歴史がありますよね。
実際社会人向けの歴史教養書は数多く出版されていますが、今日ご紹介するのはかなり異色で尚且つ読みやすくわかりやすい欧米の戦後史。
『3時間半で国際的常識人になれる ゆげ塾の速修戦後史 欧米編』です。
今回は本書を読んでの僕が「おおっ!そうだったのか!」となった部分を読書メモとしてシェアします。
『3時間半で国際的常識人になる ゆげ塾の速修戦後史欧米編』読書メモ
★近現代史をマスターするコツ
近現代史をマスターするコツは自身の政治的ポジションを決めることである。
右か左か決めることで、歴史の当事者になれる。
★アメリカの基本要素
アメリカは変わった国である。
アメリカは戦争しまくるが少しでも死者を出すと、選挙で負けて政権が飛ぶ・・・
二次大戦で欧州各国が百万単位で死者を出すなか”たかだか”30万人の死傷者を出しただけでアメリカの民主党はその後12年間、選挙で負け続けた。
アメリカとはそういう国である。
★国家とは
国家とは警察・軍隊という暴力装置と徴税機構から成り立っている。
★覚えずにわかる大統領就任年
(アメリカ)大統領選挙は、必ず4の倍数年だ。
近年なら、2016年、2020年、2024年など。
4の倍数年の11月に選挙をして翌年の1月20日に就任する。
4の倍数年以外には大統領選挙はない。
もし大統領が任期途中で亡くなった場合には副大統領が昇格する。
副大統領はスペアだ。
大統領の任期は長くとも2期8年。
3期以上はできない。
唯一の例外がフランクリン=ローズヴェルト。
当時、大恐慌やWWⅡといった未曾有の混乱期であったためローズヴェルトは異例の4選を果たした。
★調印と批准
国際常識に疎い日本人にかけている知識の1つが調印と批准の違いである。
調印とはとりあえず、外務大臣や首相が仮約束を結ぶこと。
批准は、その仮約束を国家の主権者が承認すること。
基本、議会の承認だ。
調印した国々が批准すると、その仮約束は本約束となる。日本の場合は、「調印=批准」だ。
理由は調印する首相も、批准する衆議院の多数派も同じ政党だから。これは、議院内閣制だからだ。
衆議院の多数派が首相を選び、内閣を構成する。だから、政府と議会(国会)の意見が違うということはあり得ない。
ゆえに、調印は知っているが批准という言葉すら知らない日本人もいる。
★アメリカで社会保険制度が難しいのは国民が多数死ぬような戦争をしていないから
やはり、歴史的に見て、アメリカでの社会保険制度は難しい。理由は、国民が多数死ぬような戦争をしていないからだ。
ヨーロッパが福祉先進国なのは二度の大戦で、高い共同体意識を必要としたからだ。
二度の総力戦は、自由主義国家を社会主義国家に変えた。基本的に、税と社会保険料が大きい国は所得再分配を行うため平等である。
所得のうち、税と社会保険料の負担率をいかに比較する。二度の大戦を経験したヨーロッパは50%、太平洋戦争を経験した日本は30%、戦争をやりまくるが、ほとんど死んでいない米国は20%。
オバマはこの負担率を上げることを試みたが反対意見が強い。
国民皆保険制度は、国民皆の同意が必要である。
それは自国を戦場とした総力戦を、大規模な国民動員を経験しないと無理である。
★「小麦からミサイルまで」
フランスは、どの国にも頼らずにすむ恋剤構造や軍事力を持つ。
それを表す言葉が「小麦からミサイルまで」。WW2の反省から、フランスは食糧から武器まであらゆる物資を自給することを目指した。
★イタリアが高級ブランドを生む理由
高級ブランドが多いのはイタリアがいまだに地主国家だからだ。
ドイツの地主はソ連に全て殺され、日本の地主はアメリカ指導による農地改革によって土地を取り上げられた。
二次大戦の結果について日独伊をひとまとめに敗戦国だと思っている人は多い。
しかし、イタリア人だけは自国を敗戦国だと思わないどころか戦勝国だとすら思っている。
その理由は、日独伊の中でイタリアだけ戦争の途中で連合国側に寝返ったから。
つまり、イタリアは、敗戦後の日本やドイツのような強制的な国家改造を経験していない。
結果、いまだに大土地所有制度を残している。
ゆえに、地主の家系は代々遊び、贅沢ができる。
その贅沢の繰り返しが、高級ブランドの数々を生み出した。
感想
帯に、「受験生だけのものにしておくにはもったいない!」とありますがまったく同感。
本書を読んでの感想は面白い!そしてわかりやすい!に尽きますね。
本書の著者の「ゆげ塾」さんって、僕も本書を読んで始めて知ったのですが、なんと世界史専門の予備校なのだそうです。
ということは受験生を対象にした内容なんですね。
だから、それほど深掘りした内容ではないのですが、それがビジネスパーソンの教養としてはちょうどいい感じ。
しかも「戦後史」というのは高校の授業では時間切れで習ってないことが多いですよね。
実質初めて学ぶという人も多いはず。
そういったビジネスパーソンの戦後史入門書としては抜群に良書だと思いました。
特に感心したのが下のグラフ。
本書のテーマが戦後史で欧米編ということは、内容の軸は米ソの対立関係。
いわゆる冷戦です。
で、この冷戦ってこのグラフにあるように、ピリピリと緊張した一触即発の次期と緊張が緩んだ対話の次期が交互に繰り返していきます。
そういった意味では米ソの関係を時系列で追うとき、このグラフのどの位置でその事項が起きたのかが視覚的に分かるわけで、これはすごく理解しやすい。
また、わかりやすいだけでなく、さすが予備校らしくユーモアを交えた暗記方法も紹介。
たとえば「ハゲふさの法則」。
そういわれてみれば「そうだ!」と膝を打ったのですが、ソ連から現代のロシアまで、レーニン以来彼の国の指導者はなぜかハゲとふさが交互に権力の座に着いているのです。
いやこれおもしろいわ。
こういうのって酒場のうんちく話に使えそう(笑)。
400ページ超えのけっこうボリュームのある本ですが、ときどき「おおっ!そうだったのか!」と膝を打ちつつサラサラっと読めて、戦後の欧米史が頭に入ってしまう良書。
これは受験生だけのものにしておいてはいけませんよ!
本書はDiscover21社様からご恵贈いただきました。
ありがとうございました。
目次
1部 国際関係史
2部 戦後アメリカ史
3部 戦後西ヨーロッパ史
4部 戦後ソ連史・東欧史
関連書籍
ゆげ塾さんが出している本